「新古書店」という言葉

※以前の「新古書店などの著作権問題」の項から分割しました。

 2001年5月、マンガ雑誌に、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」緊急アピールが掲載された。緊急アピールでは、「新古書店」という言葉が使われ、「従来の古書店とは違って、限りなく新刊に近い古書を廉価で売る大規模新型古書店」と説明されている。
 しかし、この説明では不十分なようである。『ヘイ・ブルドッグ』でのアンケートによると、「新古書店」を、「出版社が卸している「新古品」の書店だと思っていた」という回答は、だいたいの感じだと、約1割だそうである(5月20・21日の仮装日記)。
http://www4.gateway.ne.jp/~lovedog/memonifty/memo200105.html#memo20010520
 また、弘兼憲史氏がシンポジウム「激論! 作家 vs 図書館 ―どうあるべきか―」で、「新古書店というのは発売3日後くらいに書店からあるルートで買い上げて、ほとんど新刊に近い状態で古本として提供するというところです。」(『創』 2002年11月号)と述べているところから見ると、「考える会」自体が、「新古書店」という言葉をうまく定義できていない節がある。
 『ヘイ・ブルドッグ』でのアンケートの前置きには、「新古書店というのは、「今までの古書店とは違う、ブックオフ形式のリサイクル古書店」という意味で、そこに出版社・取次・書店が「新刊本」を卸している事実は、私の確認している限りではありません。」とある。
 新古書店が扱っている商品の中心は古本であるという点はその通りなのだが、ブックオフ型リサイクル書店が、取次から、売れ残りの「新古本」ではない、新しめの売れ筋を仕入れている例はある。直接確認できた例もあるし、情報の信頼性は分からないがネット上の情報も加えるならば、複数の取次から、複数のチェーン店が仕入れているようである(わたしが確認した例はブックオフではない)。
 利益率の高いわけではない商品を安売するので、それ自体では儲からないか、むしろ赤字になってしまうわけだが、客寄せのための目玉商品と割り切れば、十分意味があるのであろう。また、取次側にとっても、返品なしの買切といった条件をつければ、取引する意味があるのだと思われる。
 「新古書店」という名称は、「新・古書店」(新しいタイプの古本屋)と考えられる。 また、「新古書・店」とする見方をする人もいるようだ。この場合の「新古書」は「新古本」とは違い、新しめの古本という意味になる。ただし、新しめの古本だけを扱っていても、従来型の古本屋は新古書店とは呼ばれないようである。
 「新古書店」という言葉が、いつから使われだしたのかはわからない。「リサイクル書店」よりは新しい言葉だと思う。確認できた例としては、1999年11月に東京都書店商業組合が、「『新古書店』に関する調査のお願い」を配布したというものがある(『文化通信』http://www.bunkanews.co.jp/の「出版業界ニュース バックナンバー」99年11月8日付(3321号)による)。
 「新古書店」という言葉は、2000年の「考える会」結成以前から使われているわけだが、あまり普及していたとはいえない。また、「新古本」という、似ているがまったく意味の違う言葉があり、こちらも中途半端に普及している。
 「新古本」とは、出版社から流れる新品の処分本を指す言葉である。「新古品」という言葉から作られたのではないかと思われる。読み方は、たぶん、「しんこほん」か「しんこぼん」だと思う。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)には、「出版社への返本を再販契約を結ばずに古書店が直接買い取り自由に価格をつけることのできる非再販本のことである。新古本は一九九三(平成五)年、出版社が「裁断するよりは安くても売れたほうが」と古書店に持ち込んだことから一般化した。」とある。『ブックオフ革命』(大塚桂一 データハウス 1994年)でも、そのような意味で使用されている。



 「新古書店」とは別に、「リサイクル書店」という言葉がある。『知恵蔵』(朝日新聞社)には両方の項目があるが、「新古書店は、新古本店、リサイクル本書店とも呼ばれる。」、リサイクル書店は、「従来の古書店とは区別して新古書店と呼ばれることもある。」とあり、同じ意味の言葉という扱いである。
 ブックオフ型の店は、「リサイクル」、「リサイクル書店」、「リサイクルショップ」などの言葉をよく使う。『ブックオフ革命』で紹介されている坂本社長の言葉にも、「リサイクル書店」という言葉が出てくる(102ページ)。
 店側が好んで使う「リサイクル書店」という言葉に対し、「新古書店」という言葉は、外部から、従来型の古本屋と区別する必要があって使われる事が多いようだ。ブックオフ型の店を指していると思われる用例も多いが、『ブックオフと出版業界』に掲載されている「主な新古書店の店舗展開状況」(『出版月報』98年9月号より転載)のように、ブックオフ型以外の店も含んだ広い意味で使われることもある。



 「新古書店」と「リサイクル書店」という言葉は、はっきり使い分けがされているわけではないが、使われ方の違いが、言葉のニュアンスに多少影響しているかもしれない。

 下の表は、サーチエンジンで検索したヒット数で、左から次のとおり。 

goo   2000年 6月26日
goo 2001年 5月27日
goo 2002年 10月14日
Google 2001年
Google 2002年 10月14日

goo Google
新古書店 26 96 1130 344 2060
新古本屋 5 19 87 69 169
新古本店 0 5 22 22 44
新古書屋 1 1 17 8 24
リサイクル書店 259 358 343 1730
リサイクル本屋 21 61 64 134
リサイクル古書店 26 28 51 190
リサイクル古本屋 10 20 29 37

2012年10月28日ファイル分割
2012年10月28日最終更新

Hachiとか8270とか名乗っています。

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