「くんだり」の適切な用例はないのか?

2013年11月25日

増井元 辞書の仕事 - U´Å`U
上記ページで、「青森くんだりまで来た」は不適切な用例だが、それに変わる適切な用例は見つからなかったという話が紹介されていました。引用元は次の本です。


本当に適切な用例はないのだろうかと思い、ふたつの形を考えてみました。
ひとつめは、見下す意味がない使い方です。
わたしの感覚では、どうしてもそこに行かなければならない事情もないのに妙に遠い所にふらっと行ってしまったような場合、その場所を見下す気持ちがなくても「くんだり」を使う場合が結構あるような気がします。『日本国語大辞典 第二版』には、基本的な語釈のあとに、「現代では、「そんな遠くまで」「そんなところに」などの気持ちをこめていうことが多い。」という説明があります。
「東京くんだり」のように「都会+くんだり」という形は、結構使われているようです。『青空文庫』にある、「東京くんだり」が使われている作品には、次のものがあります。
三好十郎 おスミの持参金
佐左木俊郎 恐怖城
この形を使えば、見下していない用例が作れそうです。
しかし、本屋に行って『辞書の仕事』を見たところ、そのような使い方は本来の意味と違うということで否定されていました。

もうひとつは、自虐・謙遜の使い方です。
『講談社カラー版日本語大辞典 第二版』には、「自分をあざけったり、他をからかったりする言い方。」という説明があり、「話し手の土地+くんだり」という形の用例が載せられています。
ひとつめの、その土地を見下す意味のない「くんだり」にも、「用もないのにこんな遠くまで来ちゃったよー」という、自虐のニュアンスがあるような気もします。

最終更新 2014年 8月 4日



inserted by FC2 system